電気主任技術者の外部選任とは? 必要な要件などを解説!
2017/08/11
2021/04/07
電気主任技術者の外部選任とは、外部の会社(管理会社)などから選任することをいいます。
事業用電気工作物は電気事業法で定期的な自主点検が定められており、設置者(建物の所有者)が雇用した電気主任技術者が点検を行うのが基本です。しかし、さまざまな理由で直接雇用が難しいところもあるでしょう。そのため、外部の会社から選任を行う外部選任が可能です。
今回は、電気主任技術者の外部選任ができる要件などを解説しましょう。
この記事を読めば、電気主任技術者の仕事内容などもよく分かりますよ。電気主任技術者の資格取得を目指している方も、ぜひ読んでみてくださいね。
1.電気主任技術者と事業用電気工作物の自主点検
この項では、電気主任技術者の職務や、事業用電気工作物の自主点検について解説します。なぜ、自主点検が必要なのでしょうか?
1-1.事業用電気工作物とは?
事業用電気工作物とは、一般用電気工作物以外の電気工作物をいいます。事業用電気工作物は、電気事業の用に供する電気工作物と自家用電気工作物の二つに分類することができます。電気事業の用に供する電気工作物は、発電・変電・送電・配電などに関わる設備(発電所、変電所)などが該当します。また、事業用工作物の中で自家用電気工作物に該当するのは以下のようなものです。
- 高圧、特別高圧により受電するもの(600V以上)
- 構外にわたる電線路を有する電気設備
- 小出力発電設備以外の発電設備を有するもの
- 炭鉱や、煙火以外の火薬類を製造する事業場
なお、小出力発電設備の出力[kW]は以下のとおりです。
- 太陽光発電設備:50kW未満
- 風力発電設備:20kW未満
- 内燃力を原動力とする火力発電設備:10kW未満
- 燃料電池発電設備:10kW未満
また、これらの発電設備が複数ある場合、合計の出力が50kW以上あるものは除かれるので注意しましょう。すなわち、トータル規制がかかることになります。
1-2.事業用電気工作物の自主点検とは?
事業用電気工作物のうち、自家用電気工作物は電気事業法第42条に基づき、設置者が自己責任で保安規程を作成することが義務づけられています。また、電気主任技術者を選任して保安規程に基づいて年次・月次など定期的な自主点検を行うことも、同じように義務づけられているのです。
なお、作成した保安規程や自主点検を行う電気主任技術者の氏名・住所は最寄りの産業保安監督部に届け出をしなければなりません。電気主任技術者の不選任や、保安規程に沿った自主点検が行われていない場合は、電気事業法に基づいて罰金等の罰則が科せられるほか、事業用電気工作物の停止命令が下ることもあります。
さらに、電気主任技術者が退職した場合なども、遅滞なく氏名や住所の変更を届けなければなりません。
1-3.電気主任技術者について
電気主任技術者は、今まで解説してきたとおり、事業用電気工作物の自主点検などの保安監督業務を行うことのできる国家資格です。第1種~第3種までの資格区分があり、
- 第1種:すべての事業用電気工作物
- 第2種:電圧が17万V未満の事業用電気工作物
- 第3種:電圧が5万V未満の事業用電気工作物(出力5千kW以上の発電所を除く)
以上のように、保安業務を行える電気工作物の違いがあります。事業用電気工作物の自主点検は、基本的に有資格者を直接雇用して行わなければなりません。
2.電気主任技術者の外部選任とは?
この項では、電気主任技術者を外部選任する要件などを解説します。どのような要件があるのでしょうか?
2-1.外部選任とは何か
前述したように、電気主任技術者の外部選任とは、管理会社をはじめとする外部の会社から電気主任技術者を選任することです。契約は、自家用電気工作物の設置者と外部の会社で結びます。選任された電気主任技術者は、電気工作物が設置されている事業所に常駐していなければなりません。
2-2.外部委託と外部選任との違い
電気主任技術者の外部委託とは、電気保安協会などの業者や電気管理技術者に点検を委託することです。この場合、電気主任技術者は事業所内に常駐する必要はありません。ただし、外部委託が可能なのは「電気事業法施行規則第52条第2項」に定められているとおり、一定規模未満の事業所に限られています。
一方、外部選任は外部委託が不可の事業所でも利用することが可能です。そのため、外部委託が利用できないけれど、事業所内で電気主任技術者の選任をすることができなかった場合、外部選任を行います。
2-3.外部選任の選任要件
外部選任を行った場合、電気主任技術者を雇用している外部の会社と設置者の間で、以下のような要件を記した契約書を交わす必要があります。
- 設置者は電気主任技術者の意見を尊重し、保安のために指示に従う
- 電気主任技術者は、職務を誠実に行う
また、電気主任技術者は外部の会社に雇用されていなければなりません。また、外部選任を受ける有資格者の実務経験等は定められていないので、資格を取得したばかりの人でも選任を受けることができます。
2-4.メリットとデメリット
外部選任を利用すれば、設置者が直接雇用しなくても電気主任技術者を選任することができます。その一方で、外部選任は主任技術者が、事業所に常駐していなければなりません。外部の会社に電気主任技術者の有資格者が複数いなければ、外部選任は利用できないので注意しましょう。
3.電気主任技術者の資格を取得する方法
電気主任技術者の資格を取得するには、電気技術者試験センターが主催する試験を受けて合格する必要はあります。受験資格は定められていませんが、第3種でも合格率が10%を切ることも珍しくない難関試験です。無資格未経験から受験する場合は、腰を据えて勉強しましょう。第2種・第1種からいきなり受験することも可能ですが、大学等で電気関係の学科を卒業していても、不合格になることが珍しくありません。まずは第3種から挑戦してみてください。
試験は、理論・電力・機械・法規の4科目の学科試験で、第3種はこれに合格すれば取得できます。第1種・第2種は学科試験に加えて「電力・管理」と「機械・制御」の二次試験がありますので、さらに難関です。
学科試験は科目合格が認められており、3年間で4科目を合格すれば試験合格となります。ですから、3年かけて資格を取得してもよいでしょう。
4.電気主任技術者の外部選任に対するよくある質問
Q.外部選任を行う場合、2つの事業所を1人の電気主任技術者がかけもちして保安することはできますか?
A.いいえ。不可能です。
Q.外部選任を行う場合、電気主任技術者の雇用先は外部の会社のままでしょうか?
A.はい。派遣という形になります。
Q.外部選任を行う場合、たとえば資格を取得しただけで実務経験がない人でも受けることができるでしょうか?
A.はい。法律的な問題はありません。雇用先で研修をしてもらえるところもありますが、現場で前任者から引き継ぎを受けるときにしっかり学べば大丈夫です。
Q.外部選任を行う場合、会社同士で話し合いを行い決定した後で電気主任技術者に伝えてもいいでしょうか?
A.そんなことをすれば、トラブルになる可能性があります。必ず有資格者に選任を受けるかどうか確認をした後で契約を結びましょう。
Q.外部選任では有資格者が事業所に常駐していなければなりませんが、これに違反するとどうなりますか?
A.違反した場合は、罰金刑や事業用電気工作物の停止命令が下ることもあるでしょう。
おわりに
今回は、電気主任技術者の外部選任に関する解説をしました。電気工作物の自主点検は、とても大切なものです。電気主任技術者だけでなく従業員も、異常にすぐに気づけるようにしておきましょう。また、スムーズに必要事項の連絡ができるよう、有資格者と普段からコミュニケーションを取っておくことが大切です。