汽力発電の仕組みや特徴は? メリット・デメリットも紹介します!

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汽力発電とは聞きなれない名前ですが、水蒸気の力を利用してタービン発電機を回し、電力を得る方法です。火力発電所や原子力発電所では、この方法で電気が作られています。

そこで今回は、汽力発電の特徴や仕組みをご紹介しましょう。汽力発電の歴史は古く、その原理が考え出されたのは2000年以上も前のことです。ですから、それだけ優れた出力システムではありますが、デメリットもあります。

今回は汽力発電のデメリットや、その補い方などもご紹介しましょう。電気主任技術者の資格取得を目指している方も、ぜひこの記事を読んでみてください。

  1. 汽力発電とは?
  2. 汽力発電の仕組みは?
  3. 汽力発電の出力と損失について
  4. 汽力発電のメリット・デメリットは?
  5. 汽力発電以外の発電方法は?

1.汽力発電とは?

汽力発電とは、蒸気の膨張力を利用してタービンを回して電気を発電する方法です。と言うと、何やら難しそうに思われますが、蒸気機関車と大まかな仕組みは一緒です。蒸気機関車は、石炭を燃やして水を沸かして蒸気の力でピストンを動かします。汽力発電は、そのピストンがタービンに代わっただけなのです。

汽力発電の原理が考え出されたのは19世紀の頃です。ほかの発電方法よりも少ない熱量で大きな出力を得られるということで、現在でも世界中の発電所で行われています。ちなみに、水を沸かして蒸気を作るためには燃料が必要です。石炭や石油などを使う場合は汽力発電になり、原子力を使うと原子力発電になります。

汽力発電は、歴史ある発電方法なんですね。
はい。今でも世界中で行われています。

2.汽力発電の仕組みは?

では、汽力発電とはどのような仕組みで発電をしているのでしょうか? この項では汽力発電を行う設備と共にご紹介します。

2-1.水はどこから手に入れるの?

汽力発電を行うには、水と燃料が必要です。石炭や石油は、現在外国からの輸入に頼っています。輸入してきたタンカーをそのまま燃料タンクに横づけして、燃料を供給している発電所もあるのです。そして、水は海水を使います。海ならばいくら水を使っても減りません。ですから、汽力発電所は海のそばに建っていることが多いのです。

2-2.ボイラー

ボイラーは、燃料を燃やす場所です。石炭の場合は細かく砕いて燃やします。このボイラーの外側に通した管に水を流して沸騰させ、蒸気を集めるのです。

ちなみに、発生した水蒸気がすべてタービンを回すエネルギーになるわけではありません。使われなかった水蒸気は復水器で冷却されて再び水に戻ります。その水は、再び沸騰させて水蒸気になるのです。これを熱サイクルと言います。

2-3.蒸気タービン

蒸気の力で回転する羽根と回転軸を持つ機関です。これが回転することで直結された発電機が電気を起こします。発電された電気は変圧器で27万ボルト程度に高めるのです。その後、送電線と変圧器を通して電圧は低められ、最終的に100Vの電圧になり各家庭へ配られます。

汽力発電を行うには、水や燃料が必要なんですね。
はい。そのため、海の近くに発電所が作られることがほとんどです。

3.汽力発電の出力と損失について

汽力発電に限らず、すべての発電には出力と損失があります。出力とは、発電機を動かして得た電気。損失は、電気を作る過程で失われたエネルギーです。

汽力発電の出力はタービン出力と発電機出力、損失はボイラー、タービン、復水器、発電機にそれぞれ発生します。その中でも復水器の熱損失が最も大きいのです。この出力から損失を引いたものが電気的出力になります。

汽力発電では損失も起こるのですね。
はい。発生したエネルギーすべてが出力となることはありません。

4.汽力発電のメリット・デメリットは?

では、汽力発電はほかの発電と比べてどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか? この項では、その一例をご紹介します。

4-1.汽力発電のメリット

汽力発電の最大のメリットは、発電効率の良さです。発電効率とは、燃料のエネルギーをどれだけ電気に変換できるかということです。前述した出力から損失をひいた数値です。東日本大震災以降、日本では原子力発電に代わる新しい発電方法を模索し続けています。あちこちに作られた太陽発電のパネルもその一つです。

そのほかにも、風力や水力、地熱などを利用して電気が作られているのです。しかし、そのどれもが汽力発電の発電効率には及びません。ですから、汽力発電は日本の発電の主力になっているのです。

もう一つのメリットは、出力調整が容易で発電所自体も作りやすいということです。電力の需要は常に変動しています。真夏や真冬など冷房や暖房を使う時期はどうしても電力の需要が高くなるでしょう。逆に、気候がよく過ごしやすい時期は、電力の需要も低くなるのです。汽力発電は蒸気の量さえ調節すれば、発電量が調節できます。

また、汽力発電は燃料と水さえあればどこでも発電ができるのです。ですから、地熱や水力、風力発電所よりも場所を選びません。さらに、安定した電力を発電し続けられるのも大きなメリットです。

4-2.汽力発電のデメリット

汽力発電のデメリットは、発電のコストの変動が大きいことです。水蒸気を作るために水を沸騰させる燃料として石油や石炭が使われますが、その値段は時期によって大きく変動します。現在は石炭ならば比較的安定していますが、石油は中東の情勢が不安定になると価格が乱高下するのです。ですから、電気料金も短期間で上がったり下がったりします。

石炭は安価ですが、燃やすと空気中に有害物質が放出されるのです。今、中国の大気汚染が問題になっていますが、あの原因の一つが石炭を燃料とする暖房器具だと言われています。現在の技術ならば、有害物質を外気に放出しないようなフィルターも製造可能です。しかし、それをすべても発電所に取りつけるには、費用がかかりすぎます。ですから、石炭よりも石油を燃料とする発電所が多いのです。

汽力発電は発電効率が大きいのがメリットなんですね。
はい。一方、発電コストが高いのがデメリットです。

5.汽力発電以外の発電方法は?

火力発電所では、汽力発電のほかにガスタービン発電やコンバインドサイクル発電があります。ガスタービン発電は燃料を燃やしたガスでタービンを回す発電方法です。高出力なので、電力ピークのときに汽力発電の補助として使われることが多いです。

また、発電できるまでの時間が短いので、災害時の発電や飛行機のジェットエンジンにも使われています。コンバインドサイクル発電は汽力発電とガスタービン発電のメリットを合体させた発電機で、現在、火力発電の主力になりつつある方法です。

これならば、より損失を少なく熱効率のよい発電が行えます。コンバインドサイクル発電で発電を行うと、1950年代の汽力発電の2倍~3倍の出力を得られるのです。つまり、同じ燃料でも発電量が3倍になるわけです。

汽力発電以外の発電方法もあるんですね。
はい。そちらのほうが効率は良くなっています。

おわりに

今回は汽力発電の仕組みや特徴についてご紹介しました。環境のことを考えると、汽力発電より水力や風力、さらに地熱発電に主力を移していった方がよいのです。しかし、現在の生活は電気なしでは成り立ちません。

さらに、電力を安定して供給できないと、電化製品も使えないのです。原子力発電所が大きな事故を起こして以来、自然の力を利用した発電が盛んに行われるようになっています。しかし、安定した電力を供給できるようになるには、もう少し時間が必要です。

それに、汽力発電の場合は万が一事故を起こしても、原子力発電所のように被害は拡大しません。局所的な損失で済むでしょう。しかし、事故を起こさないにこしたことはありません。安全に安定して電力を供給できるように保守点検を行うのも、電気主任技術者の大切な仕事なのです。ですから、電気主任技術者の資格試験には、発電所や発電機にかかわる問題も出題されます。発電の効率や損失を求める数式なども出題されるので、しっかりと勉強しておきましょう。

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