電気主任技術者の兼任条件は? どんな設備ならば兼任が可能?
2017/03/20
2021/04/07
電気主任技術者とは、工場や高層ビル・複合商業施設などで電気設備の保安監督業務を行うための資格です。一定の電圧を超える受電設備や発電設備・変電設備などは定期的な自主点検が義務付けられています。加えて、そのような電気設備を備えている施設は、電気主任技術者の選任も必要です。しかし、何らかの理由で電気主任技術者の選任が難しい場合もあるでしょう。そのような場合は、条件を満たせば電気主任技術者を兼任させることができます。
そこで、今回は電気主任技術者の兼任条件について解説しましょう。
この記事を読めば、電気主任技術者の働き方についてもよく分かりますよ。電気主任技術者の資格取得を目指している方は、ぜひこの記事を読んでみてくださいね。
1.電気主任技術者の基礎知識
はじめに、電気主任技術者の仕事内容や働き方などをご紹介します。どのような仕事が行える資格なのでしょうか?
1-1.電気主任技術者とは?
電気主任技術者とは、事業用電気工作物の保安監督業務を行う資格です。事業用電気工作物とは、電気使用のために設置する発電所、送電網、受電設備、電気使用設備をいいます。
事業用電気工作物のうち、電気事業の用に供する電気工作物以外のものが自家用電気工作物といいます。 例として工場・ビル等の600Vを超えて受電する需要設備をいいます。
事業用電気工作物は、電気事業法に基づき自主点検が義務付けられています。500kW以上の自家用電気工作物を含む事業用電気工作物を設置している設備は、電気主任技術者を選任して自主点検を行わなくてはなりません。
事業用電気工作物(電気事業用電気工作物及び自家用電気工作物)については、技術基準維持義務(第39条)、保安規程の作成・遵守義務(第42 条)、主任技術者の選任義務(第43条)などが定められています。
1-2.電気主任技術者の仕事内容とは?
電気主任技術者の仕事は、事業用電気工作物の保安監督を行うことです。事業用電気工作物は自社のみならず他の事業者への波及事故などに至る危険性があります。送電系統は多くの需要家に電気を供給しています。よって電気工作物の工事や維持不具合が他需要家に悪影響を及ぼすことが無いようにする必要性があります。この重要な任務を負っているのが電気主任技術者なのです。
1-3.電気主任技術者の種類とは?
電気主任技術者には、第1種・第2種・第3種の三種類があります。第1種は、すべての事業用電気工作物の保安監督業務が行える資格です。第2種は電圧が17万V未満の事業用電気工作物の保安監督業務を行うことができます。第3種は、電圧が5万V未満の事業用電気工作物の保安監督となる資格を持ちます。
1-4.資格を取得するには?
電気主任技術者の資格を取得するには、電気事業法に規定された学歴または資格を有し実務経験により認定を受ける方法と、電気技術者試験センターが主催する試験を受けて合格する方法があります。
資格試験の中では、最高位の1種(1級など)を取得しないと就職に役立たないものもありますが、電気主任技術者の場合は、第3種でも十分に役立ちます。受験資格は定められていません。どなたでも受験でき、またこの資格を取得してから電気業界に転職する方も多いです。
1-5.年収や資格を取得するメリット
事業用電気工作物は、日本国中どこにでもあります。一方、電気主任技術者試験の合格率はとても低いです。事業用電気工作物を保有する事業者は電気主任技術者を配置したいのですが思うように人が集まらないのが現状です。そのため、電気主任技術者の有資格者は一定の需要があります。電気主任技術者資格を取得すると転職にも非常に有利に働きます。また、有資格者はビルメン(ビルメンテナンス業務)を行っている会社でも重宝されます。この他、一定の実務経験を積めば独立も可能です。働き方の選択肢が豊富なのも、資格を取得するメリットの一つでしょう。
2.電気主任技術者の兼任条件について
この項では、電気主任技術者の選任義務と兼任条件について解説します。兼任にはどのような条件が必要なのでしょうか?
2-1.電気主任技術者の選任義務について
事業用電気工作物の設置者は、原則として工事、維持、運用の保安監督者として、電気主任技術者の有資格者を選任しなければなりません。なお、500kW未満の自家用電気工作物の場合は産業保安監督部部長の許可を得れば、第1種電気工事士免許で許可主任技術者として保安監督業務を行うことができます。
しかし、電気主任技術者の有資格者がどうしても選任できない職場もあることでしょう。この場合は、条件付きで複数の事業用電気工作物を設置している設備の保安監督業務を1人の有資格者が兼任することができます。
2-2.電気主任技術者の兼任条件について
電気主任技術者の兼任条件は、電気事業法や経済産業省からの通達によって以下のように定められています。
- 主任技術者兼任承認申請書を各地域にある産業保安監督部の部長に提出し、承諾を受けること
- 事業所が同一または同系列の会社のものであり、数は6か所以内であること
- 電圧7,000V以下(最大電力2000kW未満)で連系等をするものであること
- 兼任する事業所が、自宅か常勤場所から2時間以内に到着できること
- 何かあった時に電気主任技術者へ速やかに連絡する責任者が選任されていること
なお、兼任する有資格者は、必ず正社員でなくてはなりません。派遣社員に電気主任技術者にしか行えない保安監督業務を兼任させることはできないので注意しましょう。
2-3.外部委託と兼任の違い
電気主任技術者の選任が困難な事業所の場合、以下の条件を満たせば保安監督業務を外部委託することもできます。
- 自家用電気工作物であって、出力1,000kW未満の発電所(原子力発電所は不可)
- 受電電圧7,000V以下の設備であること
- 600V以下の配電線路であること
外部委託を行うのは、電気保安監督業務を行っている業者です。外部委託をする場合は、委託先の電気主任技術者に点検を行ってもらうことができます。
2-4.有資格者の兼任を行いたい場合は?
電気主任技術者に複数の施設を兼任してもらいたい場合は、
- 電気主任技術者兼任承認申請書
- 電気主任技術者免状の写し
- 執務に関する説明書
- 選任を必要とする理由書
- 電気主任技術者の所属が確認できる物
といった書類を産業保安監督部に提出ことが必要です。書類の種類は各地方にある産業保安監督部によって微妙に異なる場合があるので、詳しくは最寄りの産業保安監督部のホームページを参考にしてください。
3.電気主任技術者の資格取得方法や勉強方法
この項では、電気主任技術者を取得する方法や勉強方法のコツなどを紹介します。ぜひ参考にしてください。
3-1.試験科目などについて
電気主任技術者の試験は、前述したように電気技術者試験センターが主催しています。3種は理論・電力・機械・法規の4科目です。この4科目を3年以内に合格すれば、第3種電気主任技術者の資格は取得できます。3年間かけて合格する方も珍しくありません。1種と2種は、一次試験に合格した後で電力・管理と機械・制御の2次試験があります。この二次試験は、2年以内に合格しなければなりません。
電気主任技術者の試験に受験資格は定められていませんが、第3種を合格するには工業高校の電気科を修了した程度の知識が必要です。第2種に合格するには、電気関係の専門学校を修了した程度の知識、第1種に合格するには大学の工学部電気科を修了する程度の知識が必要といわれていますが合格率や内容を考えると全くあてになりません。電気系の学校を出ていなくても十分合格できますので頑張りましょう。
3-2.申し込み方法や受験料など
電気主任技術者の申し込み方法は、センターのホームページからインターネット申込みが行えます。受験料は第3種が4,850円(インターネット申込みの場合)、第1種・2種が12,400円(インターネット申込みの場合)です。高校や大学の中には学校でまとめて申し込みをするところもありますが、それ以外はインターネット申込みが便利です。受験日は毎年9月上旬に行われ、2019年度は8月31日に第1種・2種、9月1日に3種が行われます。二次試験は11月17日です。
試験は、全国の主要都市で行われるため、遠方の方は交通手段を確保しておきましょう。
3-3.難易度や合格率について
電気主任技術者の難易度は、高いまま推移しています。科目ごとの合格基準は100点満点中の60点以上ですが、試験の難易度が高い年度は点数が引き下げられることもあります。合格率は、3種では10%前後とかなり低くなっています。一発で合格したい場合は、最低でも半年はみっちりと勉強をしてから試験にのぞみましょう。
3-4.勉強方法のコツ
電気主任者の試験勉強には、独学・講習会の利用・通信教材の利用の3種類があります。予備校は大阪や東京にごく少数あるだけですので、通える方は限られているでしょう。自治体によっては、職業訓練校(ポリテクセンター)などで講習会が開かれています。人気の講座なので、申し込みたい方は募集開始後、すぐに行いましょう。
独学の場合は、書店やインターネットショップで参考書や過去問題集を購入して勉強を行います。参考書の数は豊富ですが、どれも読み手に電気の知識があることを前提に書かれているため、中学や高校の物理で電気について学んだだけという方は、理解するのも難しいかもしれません。このような方は、まず電気数学の勉強から始めましょう。電気数学についての参考書も販売されています。
過去問題は、まったく同じ問題が出ることはほとんどありませんが、覚えた知識の確認と計算問題になれるために必ずやっておきましょう。
4.電気主任技術者の兼任に関するよくある質問
Q.実務経験がない電気主任技術者でも、兼任は可能ですか?
A.資格さえ取得していれば問題はありません。
Q.外部委託と兼任を組み合わせて利用することはできますか?
A 可能ですが、申請を忘れずに行いましょう。
Q.必ず電気主任技術者の選任が必要な施設などはありますか?
A.大規模な発電所や原子力発電所・工場・変電所などは選任が必要です。
Q.学生のうちに電気主任技術者は取得できますか?
A.はい。できます。大学や高校によっては取得を推奨するでしょう。
Q.兼任は、第1種・第2種・第3種、どの資格の保持者でも行えますか?
A.はい。行うことができます。
おわりに
今回は、電気主任技術者の兼任条件などをご紹介しました。電気主任技術者の働き方にはいろいろありますが、兼任は大変な分給与も高く設定されているところも多いでしょう。無理がない範囲ならば兼任を引き受けるのもよいですね。また、兼任を依頼する方は、有資格者の負担が大きくなりすぎないように気をつけましょう。