自家用電気工作物の点検はどうすればいい? 点検に必要な資格と共に解説
2017/03/03
2019/03/04
自家用電気工作物とは、電気事業法で定められた600Vを超える高電圧を受電する需要設備などの総称です。小規模な太陽光発電など、小出力発電設備も含まれます。一定規模の工場やオフィスビル、学校などには大抵自家用電気工作物が設置されているでしょう。自家用電気工作物は、電気事業法によって定期的な点検などが義務づけられています。
そこで、今回は自家用電気工作物の保安方法や、点検などの保安業務を行える資格についてご紹介しましょう。
この記事を読めば、定期的な保安業務が必要な電気設備がどのようなものかも分かります。電気主任技術者の資格取得を目指している方も、ぜひ読んでみてくださいね。
1.自家用電気工作物に関する基礎知識
はじめに、自家用電気工作物とはどのようなものを指すのかということや、他の電気工作物との違いなどをご紹介します。電気設備は、どのような区分が行われているのでしょうか?
1-1.電気工作物とは?
電気工作物とは、電気を使用するための機械・器具・電線路などの総称です。一般家庭でよく使われている延長コードも電気工作物の一種になります。電気工作物には一般用電気工作物と事業用電気工作物の2種類があり、自家用電気工作物は事業用電気工作物の一部です。
一般用電気工作物には
- 600V以下で受電する需要設備
- 家庭用太陽光発電
- 燃料電池発電
などがあります。
事業用電気工作物とは電力会社や工場などにある発電所・変電所・送電や配電の設備などです。
事業用電気工作物の中で
- 600V以上で受電する需要設備
- 小出力発電設備(発電出力50kW未満の太陽電池発電・20kW未満の風力発電など)以外の発電用の電気工作物と同一の構内に設置するもの
- 電線路が構外にわたるもの
- 火薬工場や炭鉱で使われている電気工作物すべて
が自家用電気工作物に指定されています。
1-2.自家用電気工作物の保安について
自家用電気工作物は、電気事業法第42条によって自主保安を行うことや、自家用電気工作物を設置した際は保安規程を定め経済産業大臣に届け出ることなどが定められています。自主保安とは、定期点検を中心とした業務のことです。
1-3.自家用電気工作物の保安点検業務を行える資格とは?
自家用電気工作物の保安点検業務を行うには、電気主任技術者の資格が必要です。自家用電気工作物を設置している施設は、電気主任技術者を雇用して定期的に保安点検をしてもらうか、外部業者に保安点検を委託する義務があります。
1-4.自家用電気工作物の保安点検の頻度とは?
自家用電気工作物の保安点検には年次点検・月次点検などがありますが、その頻度は法律で定められてはいません。設置者が自家用電気工作物を設置したという届け出を出す際に、「このくらいの頻度で点検を行います」と保安規程として報告します。
とはいえ、数年に1度というわけにはいきません。点検頻度については、各都道府県にある電気保安協会などがガイドラインを作成していますので、それを参考に決めましょう。外部業者に委託する場合は、業者が頻度を提示してくれます。
2.自家用電気工作物の保安点検や工事を行える資格について
この項では、自家用電気工作物の保安点検や工事が行える資格について、もう少し詳しくご説明します。どのような資格があるのでしょうか?
2-1.電気主任技術者とは?
電気主任技術者とは、前述したように電気工作物の保安監督業務を行える資格です。自家用電気工作物の定期点検は、電気主任技術者が行わなくてはなりません。第1種・第2種・第3種の三種類があり、それぞれ保安監督業務を行える電圧が決まっています。
電気主任技術者になると、事業用電気工作物を設置してある施設に保安監督者として就職できる他、いろいろな施設で電気工作物の保守点検を行う専門会社にも就職することが可能です。また、一定の実務経験があれば独立もできるでしょう。
2-2.電気工事士とは?
電気工事士とは、電気工作物の工事を行うことができる資格です。電気工作物は工事の方法を間違えれば、火災や漏電などの原因となるため、無資格者は家電の設置以外の工事を行うことができません。電気工事士には、一種と二種があり、自家用電気工作物の工事を行う(最大電力500kW未満に限る)という場合は、第一種電気工事士の資格が必要です。
なお、電気主任技術者の資格だけでは電気工事を行うことはできません。また、電気工事士の資格では電気工作物の保安業務は行えないのです。ですから、電気関係の資格取得を目指す方は、保安監督業務を行う仕事に就きたいのか、工事を行う仕事に就きたいのかをよく考えて取得する資格を選びましょう。もちろん、両方取得することもできます。
2-3.電気主任技術者の資格を取得する方法
電気主任技術者の資格を取得するには、一定の実務経験を積んで認定を受ける方法と資格試験を受験して合格する方法があります。電気主任技術者の試験に、受験資格は定められていません。年齢・性別・学歴・国籍に関係なく受験することが可能です。受験内容は、理論・電力・機械・法規の4科目があり、これを3年以内に取得すれば試験合格になります。試験はマークシート方式ですが、計算問題が多数出題されるため、電卓の持ち込みが許可されているのです。ただし、関数電卓はダメです。
電気主任技術者の試験は、電気技術者試験センターが主催しており、こちらから試験申し込みが行えます。
電気主任技術者の試験に合格するには、第3種が工業高校の電気科修了程度の知識、第2種が高等専門学校の電気科終了程度の知識、第1種が大学工学部電気科修了程度の知識が必要といわれているので、全く知識がない方が試験にチャレンジする場合は、第3種から挑戦しましょう。
2-4.電気工事士の資格を取得する方法
電気工事士には第一種と第二種があり、資格を取得するには電気技術者試験センターが主催する試験に合格する必要があります。なお、二種に限っては定められた学校で指定の単位を取得すると資格が取得可能です。受験資格は第一種・第二種共に定められていません。ただし、第一種電気工事士の免状を交付してもらうには、一定の実務経験が必要です。そのため、第二種を取得した後で実務経験を積み、第一種を取得する方法が一般的になります。
試験は、学科試験と実技試験があり、実技は実際に電気工作物を作成する試験です。
試験の申し込みなどは、電気主任技術者と同じく電気技術者試験センターのホームページから行えますので、まずは確認してください。
3.自家用電気工作物の点検に関するよくある質問
Q.自家用電気工作物を設置してある施設は、どこでも点検が必要ですか?
A.はい。もちろんです。商業施設からマンションまで点検が義務づけられています。
Q.電気主任技術者を雇用していないので、外部に委託したいのですがどのような会社があるのでしょうか?
A.電気工作物の保安点検を行っている会社はたくさんありますのでインターネットなどを利用して調べてみてください。各地方の保安協会に問い合わせても紹介してもらえます。
Q.電気主任技術者の試験は難しいのでしょうか?
A.難易度は高い方です。電気数学を理解する必要がありますので、全く電気に関する知識がない方は電気数学の勉強からはじめましょう。
Q.第3種電気主任技術者の資格でも役立ちますか?
A.もちろんです。第三種でも保安監督業務ができる電気工作物はたくさんあります。
Q.第2種・第1種電気主任技術者の試験からチャレンジすることは可能ですか?
A.可能ですが、大学の工学部電気科等を卒業するなどしていないと、合格は大変でしょう。第1・第2種の種電気主任技術者の二次試験問題はマークシート方式ではなく、記述式になります。従って、試験時間内に計算問題を解いたり、説明をしなければなりませんので、電験3種よりはずっと深堀して勉強しないと合格することはできません。まずは、電験の登竜門である第3種に合格してから、第2種・第1種に挑戦するかどうか考えてみてはどうでしょうか。
おわりに
今回は自家用電気工作物の点検方法や行える資格などをご紹介しました。事業用の電気工作物はたくさんありますので、保安監督業務が行える電気主任技術者の資格所有者はひっぱりだこです。年齢に関係なく仕事が行えますので、定年を迎えても働きたいという方にも向いています。