潮力発電の仕組みや特徴は?どんなメリットがあるの?
2016/02/09
2019/03/25
2011年に発生した東日本大震災で、福島第一原子力発電所が大きな被害を受けました。これがきっかけでエコな発電方法への関心がより高まったのです。
そこで今回は、自然の力を利用した発電方法のひとつ、潮力発電の特徴や仕組みをご紹介します。潮力発電とは、文字どおり潮の満ち引きを利用した発電方法です。今回はその普及率やメリット・デメリットもご紹介します。興味がある方だけでなく、電気主任技術者の資格取得を目指している方もぜひこの記事を読んでみてください。
1.潮力発電とは?
潮力発電とは、潮の満ち引きのときにおこる海水の流れによる運動エネルギーを利用して発電をする方法です。その仕組みは、基本的には水力発電と同じになります。貯水池を作って海の一部を切り離すのです。すると、満潮時には貯水池が海面よりも低くなるでしょう。干潮時にはその逆になります。その状態で水門を開くと、満潮時には海面から貯水池に向かって水が入ってくるのです。干潮時には逆に、貯水池から海面へ向かって水が流れていきます。この水の流れによる運動エネルギーを利用してタービンを回して発電するのです。
このように、潮力発電は動力用の機械を一切使いません。ですから、二酸化炭素も発生しないのです。さらに、潮力発電の最大の特徴は発電量が予測できるということです。効率のよい発電も可能です。
自然の力を利用した発電は、潮力発電のほかに太陽光発電や風力発電があります。電力は常に安定して供給できなければ意味がありません。太陽光発電や風力発電はいつ、どのくらいの電力が得られるのか予想がつきにくいのです。そのため、現在主力の火力発電に代わる方法としては不安定すぎます。
しかし、潮の満ち引きは、あらかじめ計算できるのです。ですから、1日にどのくらいの電力が発電できるのかは、予想がつきます。そのため、計画的な発電ができやすいのです。なお、潮力発電と同じように海で行う発電として波力発電があります。
これは、波の力を利用して発電をする方法です。これも潮力ほどではありませんが、発電量が予想しやすく計画的な発電ができます。
2.潮力発電のメリット・デメリットは?
では、潮力発電にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか? この項ではそれを詳しくご紹介します。
2-1.潮力発電のメリットは?
潮力発電の最大のメリットは、タービンを回すのに化石燃料を必要としない、ということです。ですから、資源の少ない国でも海さえあれば発電が可能になります。さらに、二酸化炭素も放出しないので、環境にも優しいでしょう。
また、原子力のように環境を汚染する物質も必要ありません。ですから、施設さえ作ってしまえば後は自然の力に任せておけばよいのです。運用コストは限りなく低いでしょう。
2-2.潮力発電のデメリットは?
潮力発電のデメリットは、発電場所の確保です。貯水池を作るには、満潮と干潮のときに潮位に一定の差があるところでなくてはなりません。しかし、そのような場所は限られています。周囲を海に囲まれている日本でも、潮力発電に適した場所は数か所しかありません。
また、ダムのように堰(せき)を作って海水を隔離する必要がありますが、その結果自然を壊したり生態系を破壊したりしてしまうこともあるでしょう。さらに、海水には塩分が含まれています。ですから、タービンをはじめとする機材が錆びるのも早いでしょう。そのため、メンテナンス費用がかかります。現在のところ火力発電の数倍の維持費をかけて、潮力発電を行うメリットは少ないということで、日本では研究が進んでいないのです。
2-3.潮力発電を実際に行っている国はあるの?
現在のところ、フランスのランス潮力発電所が、世界で最も古い潮力発電所として、運営されています。1年間で約24万キロワットを発電しているのです。
また、2010年には、韓国にも潮力発電所が建設されました。しかし、日本では現在のところ、潮力発電所が建設される予定はありません。もし計画が立ち上がったとしても、成功するかどうかは不明です。
3.日本の発電の主流は何?
現在のところ、日本では原子力発電所が一部を除いて停止しています。ですから、主力は火力発電所になるのです。火力発電とは、石油や天然ガス、さらに石炭を燃やして蒸気を発生させ、タービンを回します。火力さえ調達できれば安定して発電ができることから、日本だけでなく世界中で発電所といえば、火力発電を指すところも少なくありません。
しかし、資源の少ない日本では、火力発電所の原料である石炭や天然ガス、石油をすべて輸入に頼っています。ですから、原油価格が上がると電気代も上がってしまうのです。
4.従来の燃料に頼らない発電のメリット・デメリットは?
では最後に潮力発電以外のエコな発電の種類と特徴、メリット、デメリットをご紹介しましょう。
火力発電に比べてどのような違いがあるのでしょうか?
4-1.太陽光発電
ソーラーパネルを設置することで、発電をする方法です。東日本大震災の後でエコな発電が推奨され、一気に日本中へ広がりました。家庭で電気を発電することができるので、戸建ての家の屋根に設置されることも多いでしょう。こちらも発電に使うのは太陽光ですので、二酸化炭素が発生しません。
また、太陽光さえあればよいので、発電場所を選ばないのもメリットです。しかし、その反面ソーラーパネルで発電できる量が多くありません。戸建ての家の電気ぐらいは賄えますが、日本中すべての人が使う電気を安定して作ることはまだできないのです。
4-2.風力発電
風で巨大な風車を回し、その動力でタービンを回す発電方法です。大きなプロペラが回っている風景を見たことがある方もいるでしょう。風力は風があるところならば、どこでも作れます。ですから、太陽光と同じように場所を選ばずに発電できるでしょう。しかし、風力はいつどのくらいの風が吹くのか予想ができない、というデメリットがあります。ですから、計画的な発電ができません。実際に風力発電所をつくるためには、1年以上の風況調査をしないといけません。
また、日本は台風がひんぱんに上陸します。そのため、風力発電の施設がダメージを受けやすいでしょう。あれだけ大きな風車は、風の抵抗も受けやすいのです。ですから、太陽光と同じくエコな発電方法ではありますが、火力発電所に代わるほどの電力を作ることはできません。もう少し研究が必要なのです。
おわりに
今回は潮力発電の仕組みや特徴をご紹介しました。潮力発電は、四方を海に囲まれた日本では、ぴったりの発電方法に思えます。しかし、実際は潮力発電を行なうのに良い場所がなかなか無いのです。さらに、日本の海辺はいろいろな施設がすでに建てられています。ですから、新しい施設を建てる余裕がないということもあるでしょう。
また、潮力発電の施設がどのくらいの台風に耐えられるのかもまだ分かりません。そのため、本格的な施設はなく実験施設があるだけなのです。これよりは、地下のマグマの熱エネルギーを利用して発電する地熱発電の方が、実用化できるかもしれません。しかし、世界的に見れば潮力発電はエコな発電方法として注目が集まっています。
特に、大気汚染に悩む中国では、潮力発電は魅力的でしょう。しかし、現実は潮力発電を作る設備もありません。実用化はあと20年ぐらいは必要ともいわれています。しかし、実用化すれば、エコで安価にエネルギーが作る出せることでしょう。